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Manual

処理活用マニュアル

イノシシ・シカ肉の品質向上のための捕獲・処理方法

野生獣を食肉として利用する場合、十分な放血処理が行われていることが大前提となります。ここでは放血処理以外の部分で肉質に及ぼす影響について解説します。

(写真撮影・情報提供:渡邊彰)

ストレスと肉質

ストレスを受けると肉質に影響を及ぼすことは野生獣肉だけではなくウシ等の家畜肉でもよく知られています。肉質に影響するストレスは「疲弊」と「興奮」の2つがあり、それらが肉質に与える影響は、肉のpH を測定することで推察できます。

① DFD肉

生時の疲弊のため、死後ほとんどpH が低下しない肉のことです。肉の色調が暗く,肉汁排出が極めて少なく、肉の表面がドライです。pHが7.0 に近い肉は柔らかいですが、雑菌が繁殖しやすく菌による不快な臭いが生じることもあります。

② 正常肉

死後、pH が徐々に低下して、24 時間経過するとpH 5.4 ~ 5.6 程度まで低下します。畜肉では正常な肉とされています。

③ PSE肉

止め刺し時の興奮などにより、死後急速にpHが低下する肉のことです。豚肉で良く見られ「むれ肉」とも言われます。急速にpH が低下し酸性下で発熱するためにタンパク質が変性してしまいます。止め刺し後1時間でpH が6.0 より低い場合はPSE の可能性があります。色調が白っぽくなり、多くの肉汁排出が起こります。

ストレスと肉質

pH モニタリングのすすめ

典型的なDFDシカ肉(7日目でpH6.77)
典型的なDFDシカ肉(7日目でpH6.77)

このように捕獲や止め刺しの状況は肉質に大きな影響を与えます。これらの状況を客観的に把握するには死後1時間目と24 時間以降で筋肉のpH を測定することが有効です。pH メータが正確ですが、食肉専用のpH 試験紙でもイノシシ、シカ肉のpH を測定することが可能です。

※ 本ページの内容は農研機構生研支援センター「生産性革命に向けた革新的技術開発事業」の支援を受けて実施したものです。